保育園では決して教えてくれない、友達の作り方

2024年11月
  • 夜間保育士になってわかったこの仕事のやりがいと覚悟

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    私は、奈良県の夜間保育士として働いて5年になります。この仕事を始める前、友人からは「夜勤なんて大変じゃない?」「生活リズムが崩れそう」と、心配されることがほとんどでした。確かに、この仕事は、体力的に、そして精神的に、決して楽なものではありません。しかし、日中の保育では決して味わうことのできない、深く、そして温かい「やりがい」が、ここには確かに存在するのです。ここでは、私が日々感じるこの仕事の喜びと、それに向き合うために必要な覚悟について、お話ししたいと思います。 この仕事の最大のやりがいは、子どもや保護者と、家族のように深く、濃密な関係を築けることです。夜という時間は、人を素直にさせ、心の距離を縮める不思議な力があります。日中の喧騒から離れ、少人数の子どもたちと、まるで我が子のようにじっくりと向き合うことができる。夕食を共にし、お風呂に入れ、寝かしつける。その一つひとつの営みは、子どもとの間に、揺るぎない「愛着」を育んでいきます。最初は心を閉ざしがちだった子が、少しずつ私を信頼し、膝の上で安心して眠ってくれた時の、あの小さな寝息と温もり。それは、どんな言葉よりも雄弁に、この仕事の喜びを伝えてくれます。 保護者との関係も同様です。仕事を終え、疲れ切った顔で子どもを迎えに来る保護者。その日の子どもの様子を伝え、「お仕事お疲れ様でした」と一言添えるだけで、保護者の表情がふっと和らぐ瞬間があります。「先生たちがいてくれるから、安心して働けます」。そう涙ながらに感謝された時、私は、この仕事が、単に子どもを預かるだけでなく、その家庭の生活そのものを、根底から支えているのだと実感します。私たちは、子育ての悩みを共有し、共に子どもの成長を喜ぶ、保護者にとっての「戦友」のような存在になれるのです。社会の片隅で、誰かの人生を力強く支えているという確かな手応え。これこそが、夜間保育士としての、何よりの誇りです。 しかし、そのやりがいの裏側には、常に厳しい現実と向き合う「覚悟」が必要です。まず、自分自身の「心身の健康管理」です。夜勤を含む不規則な生活は、確実に体に負担をかけます。休日は意識的に体を休め、栄養バランスの取れた食事を心がけ、自分なりのストレス解消法を持つこと。プロとしてこの仕事を続けるためには、徹底した自己管理が不可欠です。また、精神的な負担も決して軽くはありません。夜間保育を利用する家庭の中には、貧困や虐待といった、深刻な問題を抱えているケースも少なくありません。子どもの心身に残された傷跡を目の当たりにし、何もできない自分の無力さに、胸が締め付けられる夜もあります。私たちは、専門職として冷静でなければなりませんが、その子の悲しみに共感し、心を痛める一人の人間でもあります。この感情のバランスを保ち続けることは、時に非常に困難です。 同情と支援の境界線を見極めること、そして、自分一人で抱え込まず、必ず同僚や上司に相談し、チームとして対応すること。それが、自分自身を守り、結果として子どもを守ることに繋がります。夜間保育の仕事は、子どもたちの「光」の部分だけでなく、その背景にある「影」の部分にも、深く向き合わなければならない仕事です。それは、きれいごとだけでは済まされない、人間の生々しい現実に触れる仕事です。その全てを引き受ける覚悟を持った時、初めて、この仕事の本当の尊さが見えてくるのだと、私は信じています。

  • 乳児院のリアルな一日夜勤、多職種連携、そして感動の瞬間

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    乳児院での仕事に興味を持った時、多くの人が知りたいと思うのは、その具体的な日常でしょう。求人票の文字だけでは伝わらない、現場の空気感、仕事の厳しさ、そして、そこでしか味わえない感動。ここでは、ある乳児院で働く職員の一日を追いながら、そのリアルな姿を描き出します。保育士で勤務することがいきがいそれは、絶え間ない緊張感と、深い愛情が交錯する、「命の営み」そのものの記録です。 朝7時。夜勤の職員からの申し送りで、日勤の一日が始まります。「Aちゃんは昨夜少し熱っぽくて、夜泣きが激しかったです」「B君はミルクをよく飲んで、朝までぐっすりでした」。一人ひとりの夜間の様子を詳細に聞き取り、電子カルテと照らし合わせながら、今日一日のケアの方針を頭に叩き込みます。フロアに響く「おぎゃあ」という泣き声を合図に、子どもたちの起床、検温、おむつ交換、着替え、そして朝食の介助と、怒涛の時間がスタートします。言葉を話せない子どもたちの機嫌や体調を、表情やしぐさから読み取り、きめ細やかに対応していきます。 午前10時。比較的体調の安定している子どもたちは、プレイルームで過ごします。職員は、子どもたちの発達段階に合わせた遊びを提供しながら、その関わりの中で発達のアセスメントを行います。寝返りの練習をする子、おもちゃに手を伸ばす子、その一つひとつの成長が、職員にとっての喜びです。同じ頃、別の部屋では、理学療法士が脳性麻痺のある子のリハビリを行っています。その隣では、看護師が医師の回診に同行し、医療的なケアが必要な子の処置にあたります。このように、様々な専門職が密に連携しながら、それぞれの子どもに最適なケアを提供していくのが、乳児院の日常です。 午後1時。子どもたちが昼寝に入ると、職員はようやく一息つけますが、休む暇はありません。この時間を使って、日々の記録作業や、個別支援計画の見直し、そして職員間のカンファレンスが行われます。「Cちゃんが最近、人の顔をじっと見つめるようになりました。愛着が育ってきているサインかもしれません」。こうした日々の観察から得られた情報を共有し、チームとしての子どもの理解を深め、今後の支援方針を話し合います。午後3時、子どもたちが目覚め、おやつの時間、そして入浴と、再び慌ただしい時間が流れます。夕方には、家庭復帰を目指す親子の面会に立ち会うこともあります。ぎこちないながらも、我が子を愛おしそうに抱きしめる親の姿に、胸が熱くなります。 午後7時。日勤の職員が夜勤の職員に詳細な申し送りをし、帰路につきます。しかし、乳児院の営みは終わりません。夜勤の仕事は、子どもたちを寝かしつけた後も続きます。定期的な見回り、授乳、おむつ交換はもちろん、膨大な量の洗濯物をたたみ、哺乳瓶を消毒し、翌日の準備を整えます。深夜、激しく泣き叫ぶ子の背中をさすりながら、一緒に夜が明けるのを待つことも一度や二度ではありません。この仕事は、体力と精神力の限界を試される、過酷な仕事です。しかし、それを乗り越えるだけの、かけがえのない瞬間があります。人を怖がって決して目を合わせなかった子が、初めて笑顔を見せてくれた時。誰にも心を開かなかった子が、そっと膝の上に乗ってきた時。そして、様々な困難を乗り越え、新しい家庭へと無事に巣立っていく後ろ姿を見送る時。その感動は、すべての苦労を吹き飛ばし、「この仕事を選んでよかった」と心から思わせてくれるのです。